出版社の「紙担当者」は苦労がいっぱい!?

ペーパーコンサルへの道

私はこうして「ペーパーコンサルタント」になりました

 2008年という年は、その後のわたくしの人生に非常に大きな影響を与えた年と言って過言ではありません。
 前年の暮れ頃でしたか、来年春には、用紙メーカーさんサイドから、大幅な用紙値上げ要請が来るという話が、まだまだ噂の段階でしたが、チラホラと聞こえてきました。この時期には、「また、いつもの通り『脅し』程度で、実行などあり得ないだろう」、というのが出版者サイドの見解。要は、安心し切っていたのですね、2007年末の時点では。

 プロの紙担当者は、紙を見る際、どんな道具を使って、どのようなポイントに着目し、紙の特質を瞬時に分析するのでしょうか?
 「道具」といっても、使用するのは、ご想像の通り、「目」と「指先」です。A4サイズくらいの白紙を渡された時、わたくしが確認するのは、まず「色の傾向」です。以前にもお話ししたように、どんな紙にも、それが白紙であるならば、「~白い」という傾向を持ち合わせています。
 どのような絵柄を印刷するのに適しているかを見抜くこと、がポイントの第1点目。
 あまりに「青白い」紙に、人間の肌が多い絵柄を印刷したりすれば、その「青」の影響を受けることによって、「自然な」肌色が再現出来なかったりしますので、「~白い」を把握するのは意外に重要。

 前回のお話は、紙の「白」には、さまざまな傾向の「白」がある。
 「青白い」、「黄色白い」、「赤白い」が、メインとなる3色。
 「灰色白い」、「緑白い」は、かつてあった、今では懐かしい「白」の傾向です。
 某女性月刊誌の編集長から、「表紙の用紙を、最も白く見える『白』にしてくれ」という命を請け、悩みに悩んでいた時。キッカケを与えてくれたのは、意外や意外、「オリンピック中継」の国旗掲揚シーンだったのでした。青と白を基調にした国旗よりも、赤と白の「日の丸」。日本の国旗の「白」の方が、なぜにキレイに白らしく見えたのか?
 もしや、赤という色には、「白」を引き立てる効果があるのかも。

 わたくしの、出版社における約20年間の紙担当者生活。その間には、さまざまな方々との出会いと別れ。はたまた、激突と軋轢なども当然ございました。部署ごとに言い分がそれぞれなのは、当たり前。紙担当者としては、本を制作する大元である編集部の意見を尊重しつつ、コスト面にも十分配慮して、最も望ましいカタチを提案するのが仕事です。

 我が師匠が会社をを辞めたという話を風の便りで聞いた頃、懸案だった「紙の入庫・出庫をパソコン化せよ」という社長命令が、いよいよ動き出しました。
 コンピュータ室(わたくしが退社する頃は、情報システム室)の担当者1人とコンビを組んで、約半年間に及ぶ打合わせを経て、どうにかシステムが構築されたのは、決算処理まであと3ヶ月という冬のこと。
 5月末の決算後、6月1日から用紙のシステムを導入せよ、というのが社長からの命題でした。

 「鬼コーチ」であります師匠の元で、約3年間の「厳しい」修行期間を経た頃には、紙についての知識も、自信も十分に付きまして、師匠とのコンビネーションも絶好調。
 「動」の師匠に対して、「静」のわたくし。何か納得がいかないことがあれば、怒鳴り散らして、真っ向から猛抗議するのが、我が師匠。に対して、時に笑顔を浮かべつつ、不気味なほど丁寧な言葉で、理不尽な行為に対して詰め寄るスタイルが、わたくしです。
 後に「やさしい悪魔」と噂されるようになる、わたくしの交渉スタイルの「片鱗」が、当時の仕事ぶりにも表れていたのかもしれません。「田中、例の件はオマエに任せたから、好きなようにやっていいよ」、などと言われることも多くなり、何となく「役に立ってる」感じも出て来ていました。

 わたくしは行きがかり上、某出版社さんにて紙担当者になり、「鬼コーチ」の下で約3年間の「修行期間」を送りました。
 わたくしのことを、「田中選手」と呼んでいた師匠。師匠は当時、出版社の紙担当者として10年のキャリアを超え、まさに全盛期。そのパワー、スピード、テクニック、どれをとっても業界屈指の実力者でした。本当に気が短くて、曲がったことが大嫌い。「完璧主義」で自分も100%を目指すので、他人にも常に100%を求める男です。
 会社でも、業者さんたちに対して怒鳴りまくっているイメージで、社内からは、かなり強烈な人物と目されていたと思います。 ですので、わたくしが師匠の下に「修行」に入った時、同僚たちからは、「あんな人に付くなんて、本当に運が悪いね」、などと要らぬ心配をされたものでした。

 わたくしが、紙担当者への道を歩み始めたのは、今からおよそ20年前の春のこと。某出版社さんにて、入社から2年間、複数の雑誌の進行、予算管理の仕事をこなし、3年目から紙担当者へとトラバーユしたのであります。

皆さま、初めまして。 日本で唯一の「ペーパーコンサルタント」、田中 潤と申します。
某出版社に勤務すること、約20年。 そのキャリアのほとんどすべてを「紙担当者」として過ごし、用紙業界の「しきたり」を良い意味でも、悪い意味でも熟知しております。

その中で、わたくしが最も疑問に思うこと。それは
「用紙単価には、なぜに一物二価ならぬ、一物四価も五価もあるのか?」
「なぜに、ユーザー様が「適正な用紙単価」を、自力では到底知り得ない仕組みになっているのか?」
ということです。

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